<『史上最低の侵略』その46>
A
take-46
December 1st 13:20
“なっ、何だこりゃ? ソラっ”
“ガラクタの巨大な塊! それ以上もそれ以下もないっ!”
“でも何だっ! このサイズ”
“この前戦った、ビーストエレキングに負けてない! それでも、ガラクタの塊!”
あくまで断言するソラに、頷くしかないゼロ。
そんな若き戦士の隣で、スラッガーを失い坊主頭の偽セブンに偽ゼロも立ち尽くしている。エナジーコアが点滅している獲物に襲いかかることも忘れ、茫然自失の主人たちが指示を出せずにいるせいだ。そんな彼らの上空では。
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「タカフミ、これはどういう意味なの? 説明しなさいっ!」
「り、り、リーダー! 俺かて、知らんわっー! もう、お嫁に行かれへんっ」
「リーダー、これって、ドラえもんがどら焼きを隠していたら、ネズミを結果的に餌付けしてしまった。みたいなものでは?」
二人を落ち着かせようと口走った当人にさえ意味不明なツッコミが、サヤの動揺をなにより雄弁に物語っていた。そしてそれは決して彼ら当事者だけでなく……。
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「マジかっー?」「なんだありゃあ!」
夢野市唯一の男子校、夢野修道館学院高等学校の体育館地下の避難シェルターで、男子生達が絶句しつつも呆れていた。
「……すんごい下手クソやけど、もしかして俺が知ってる……? そ、そんなっ」
モニタを見て、頭痛がする頭を抑えているのは、倉澤チーフの長男、フミタケだ。
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「何あれっ?」「巨大ゴミロボット?」
夢野市民図書館地下の避難シェルターでモニタを見ている避難している市民達。
何とか瞼を開けたウミだが、モニタの中の悪い冗談のごとき代物を見たとたん、再び意識が遠のいてゆく。自分は悪夢を見たのだと全く疑うこともないままに……。
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「デッサン凄いデタラメだし、目の大きさのバランスも手の長さもみんな無茶苦茶だけど、ま、まさかタカフミさんっ!? こ、こんなの絵描きとして許せないっっ!」
あまりのひどさに思わずツクヨさんへの愛がギッチリ詰まったバスケットさえ振り回し、目を吊り上げて叫ぶテラ。
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「……倉澤君。確か君は頭痛薬を持参してましたね……」
「……補佐官は確か、アスピリンでしたね。あ、西澤リーダーも。レオンはバファリン……」
「……チーフりん。私も頭、割れそう……」
「……ヒトミはロキソニンでしたね。では私も……」
偽セブンと偽ゼロの弱点を何とか解明しようと夢中の高嶺リーダーを除いて、ミッションルームでは倉澤チーフの、医師としてはなはだ感心できない頭痛薬ばら蒔きタイムとなっていた。
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「南雲君、あれは」
「ゴミですね」
「ゴミには違いないが、あと数分で自壊するな」
「確かに。構造力学を全く無視してます」
「どうやら金の使い時のようだ。確か最近、御蔵島潮汐発電所のノウハウの顧問料がフランスから入ったはずだったな」
「それに市長。東京電力の株を第三国に売ると圧力をかけましょう。まだ原子力を頑張っている電力会社など」
「では避難解除後に東京電力にホットラインを繋いでくれ。あと東京都知事にもだ」
「はっ」
夢野市役所の市長室で、さながら時代劇の悪代官のような会話を交わす市長と筆頭秘書。そんな彼らの前の大型テレビを模したモニタでは、今まさに史上最低ともいうべき不毛なる戦いが始まろうとしていた。
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「ドース、偽ゼロをやっつけろ!」
「はいはい。ではロケットミサイルを」
カチッ! スイッチを押したが、ミサイルは発射されない。
「なんだドース、出ないではないかっ!」
「仕方ありません。メインコンピュータが拾ってきたWindows95なんですから」
「せめてXpならよかったのに」
「あれは前にあなたが売り飛ばしたじゃないですか。スシパワーの1000円デーの資金にするからって」
ミースに返しつつもミサイル発射のためのプログラムが入ったフロッピーをドライブから出し入れしつつ首を捻るドース。だが彼は知らなかった。この超巨大ポンコツの頭脳でもあるポンコツWindows95は、実はエロスパムによるウィルスに感染していて、ハングアップも時間の問題だったのだ。一緒に拾ったインストール用フロッピーでクリーンインストールすればよかったのだが、それはドースの手で初期化され、いまやミサイル発射コマンドを書き込まれている。そんなドースに業を煮やしたボースがついに下す命令! それはこの戦いがさらなる低次元に突入することの高らかな宣言にほかならなかった。
「ええいかまわん! 偽ゼロごとき踏み潰せ!」
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「タ~~~~タ~~~~カ~~~~ウ~~~~!!!!」
巨大な片足がたちまちスローモーションのごとき動きで地から離れ、ただの一跨ぎで一人と二人の戦士たちの目の前の大地を揺るがせ踏みしめる。とたんに見上げる巨体を激震が走るや、ありとあらゆる大きさの部品がバラけて豪雨のごとく戦士たちの頭上から降りそそぐ。たちまち50メートルものウルトラ戦士たちが胸までゴミの山に埋もれるその威力!
“うわっ、こりゃたまらねえ! ソラ、いったん下がるぞ”
“ああ、これじゃガラクタの山に生き埋めだ。こんな無茶苦茶な構造でよく動けるもんだな”
ようやく我に返ったようにゴミの山から這い出る敵たちを尻目に、再び巨大な足がゼロの頭上に迫る!
「オ~~~~テ~~~~ガ~~~~ラ~~~~!!!!」
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コメント
もも
2022年 02月04日 05:44
凄いですね
ふしじろ もひと
2022年 02月05日 01:34
もも様こんばんは。
これがポンポスの「本気」です(大汗)